京都市北区の歯医者「小佐々(こささ)歯科診療所」院長の小佐々 晴夫(こささ はるお)は、これまで幼稚園や小学校の担当歯科医として歯科検診を行ってきました。毎年の歯科検診のなかで、「近年子どもの不正咬合が増えてきている」と感じ、それを裏付けるために数年前からデータを蓄積してきました。
歯科検診での咬合異常及び要観察者数と割合
永観堂幼稚園 | 立命館小学校 | |||||
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年度 | 検査者数 | 咬合異常及び 要観察者 |
% | 検査者数 | 咬合異常及び 要観察者 |
% |
2006年 | 208人 | 158人 | 76.0% | 357人 | 187人 | 51.3% |
2007年 | 219人 | 189人 | 86.3% | 478人 | 347人 | 72.5% |
2008年 | 194人 | 154人 | 79.4% | 599人 | 467人 | 77.9% |
2009年 | 171人 | 124人 | 72.5% | 719人 | 559人 | 77.7% |
2010年 | 160人 | 121人 | 75.6% | 711人 | 600人 | 84.4% |
2011年 | 159人 | 119人 | 74.8% | 717人 | 570人 | 79.5% |
2012年 | 164人 | 114人 | 69.5% | 716人 | 583人 | 81.4% |
2013年 | 174人 | 125人 | 71.8% | 718人 | 571人 | 79.5% |
合計 | 1450人 | 1106人 | 75.7% | 5015人 | 3884人 | 75.6% |
これらのデータからは、およそ75%以上の子ども、つまり10人に7~8人に不正咬合もしくはその予備軍(要観察者)であるという結果が導き出せます。
予備軍は、一見素人目には問題のない歯並びと見え、正常なものと区別がつきません。しかし、子どもの歯並びは日常生活の中でついついしているちょっとしたクセや、食生活、生活習慣の乱れで簡単に変形してしまいます。
小さな変化(異常)であっても放置すると、いずれ重症の不正咬合になる可能性が高くなります。 いわば、不正咬合は成長過程における「生活習慣病」といっても過言ではないのです。 この結果から私は「予防矯正」の重要性をとても強く感じることになりました。
子どもの不正咬合の原因になるクセ
子どもの不正咬合は、現代の軟らかなものを好む食生活により噛むことが少なくなったことと、西洋化された生活習慣が大きく影響していると考えられます。また、成長途中の子どもの身体は柔軟で、ちょっとした負荷が顎や歯の発達を左右します。不正咬合になりやすいクセには次のようなものがあります。
「姿勢的問題」のクセ
- ほおづえ
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頭部は人間の身体の中でも最も重い部分です。ほおづえをつくクセは、顎の骨や顎関節に集中してその重さがのしかかって顎が変形してしまいます。
- うつぶせ寝・横向き寝
-
うつぶせ寝も、普段ならかからない頭部の重さが顎の骨にかかることになります。長時間のうつぶせ寝には気をつけてあげましょう。上向き寝が理想です。
- 食作法・早食い・食事中の姿勢
-
軟らかな食品が簡単に手に入るようになりましたが、噛むことを怠った顎の骨は発達度合いが低くなってしまいます。丸呑みや早食いをせず、よく噛んで食べることが顎や歯の正常な発達につながります。足をブラブラした状態で食事をしたりすると噛む力が弱まり、噛む回数が減ります。
「機能的問題」のクセ
- 指しゃぶり(3歳以上)
-
子どもの口の「吸う力」はあなどれません。3歳以降になっても指しゃぶりが習慣化すると、上下の前歯が咬み合わなくなり、歯並びが悪くなってしまいます。
- 爪噛み・唇噛み
-
爪を噛むことも、唇を噛むことも、成長期の歯や歯ぐきに大きな負担となります。特に、唇を噛むクセは顎の関節にも影響を与えます。上下どちらの唇であっても、唇を噛むことは、不自然な顎の動きをしているのです。
- 歯ぎしり・食いしばり
-
歯と歯を噛み締めて「きしらせ」たり、強く食いしばったりすることは、歯への負荷となるばかりか、顎関節にもよくありません。また、歯がすり減ると共に歯並びが乱れます。
- 片噛み
-
片方の歯でのみ噛むことを片噛みと言います。片噛みを続けると顔が歪むと共に正中がズレ、顔が変形してきます。
- 舌のクセ
-
ぼーっとしているときに舌が出ていたり、飲食物を飲み込むときに舌を押し出したり、歯を押したりするようなクセのことを「舌癖」といいます。一番目立つ前歯の歯並びが乱れる原因となります。
- 口呼吸
-
いつも口が開いて、口呼吸をしていることが歯並びに悪影響を与えます。実は、口呼吸はお口の中での舌の位置が悪くなってしまい、不正咬合につながることがあるのです。
このように、日常的に何気なく行っているクセや習慣によって、歯並びや顎の骨の発達は乱されていくのです。予防矯正では、お子さんのお口の様子からその傾向を見極め、無意識に行っている「悪いクセ」を解決できる方法をアドバイスいたします。分かっていても直すのが難しいのがクセや生活習慣です。それは大人でも同じこと。しかし、当院では、さまざまな工夫によって、そういったクセの解消につながるトレーニングをご提案します。
- 口唇を閉じるトレーニング
- 舌の筋力を強くするトレーニング
- 唇やほほ、口周りの筋肉を強くするトレーニング
- 正しい飲み込み方を覚えるトレーニング
- 正しい舌の位置や唇の状態をキープする習慣を身につけるトレーニング
お子さんの悪いクセの改善は、親御さんの協力なくしてはありえません。歯科医師と本人、そして親御さんの三人四脚で行う必要があります。私たちが心がけているのは、先ず悪いクセを見い出し特定することです。
そしてそのクセを何故する様になったのかの原因の究明にすることです。
このためには、親御さんと一緒に歯科医師がお子さんの視点に立つことが必要です。高圧的な態度をとってはいけません。悪いクセはあっても、悪いお子さんはいないのです。悪いクセというのは、そもそも何らかのストレスが理由で行っている場合がほとんどです。つまり、悪いクセを導いてしまった何らかの原因があるはずなのです。
当院では、こういったメンタル面からのアプローチとケアによって、予防矯正は進めます。「うまく引き出すこと」は歯科医師だけの努力だけは成り立ちません。親御さんやご家族との良い関係を築きながら、本人の気持ちをしっかり読み取ってあげる必要があるのです。
「うちの子も矯正治療が必要?」~一人で悩まずご相談ください
矯正治療が必要かどうかは、お口の中を診断してみないことにはわかりません。お子さんに気になるクセや歯並びのお悩みがあるなら、ぜひ一度、当院へご相談ください。
当院の基本姿勢は「将来の矯正治療が不要になる診療を行う」ことです。もし、矯正治療が必要になったとしても、負担が軽減できるようなご提案をいたします。
また、お子さん・親御さんにもわかりやすくご説明します。正しい咬合についての理解を身につけることが、もっとも不正咬合を防ぐことにつながるのです。
実際に、「将来矯正治療が必要になりそう」と思われたお子さんでも、当院の予防矯正を受診し、簡単な装置の使用やトレーニングによって歯並びが改善した例が多数あります。抜歯や大がかりな処置を行う矯正治療が必要になる前に、予防を検討してみましょう。幼児、小学生、中学生のいずれの年代でも、矯正治療よりは楽に改善できる方法があります。お気軽にご相談ください。